資金調達手法のひとつであるファクタリングは、債権の即時現金化という大きなメリットが注目されている手法です。
しかし、債権を第三者(ファクタリング業者)が買い取るという仕組みに対し、「怪しい」「大きなデメリットがあるのでは?」と考えている方も少なくないでしょう。
本記事では、ファクタリングが持つメリット、デメリットを詳しく紹介します。
また、ファクタリングの仕組みがどうなっていて、どういったことを注意すべきなのかも合わせて解説していきましょう。
ファクタリング=売掛金の現金化
この記事を読んでいる方は、すでに「ファクタリング」がどういうものか知っている方も多いと思いますが、改めて簡単に特徴を説明しましょう。
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング業者が「買い取り」、債権を現金化する資金調達手法の一つです。
大きなメリットとしては、本来であれば支払期日まで待たなくてはならない売掛金を、素早く現金化できることが挙げられます。
特に、支払サイクルが長期にわたる建設業や、医療・介護業界ではさまざまな企業・機関で利用されています。
また、ファクタリングには、売掛先に通知しない「2社間」、売掛先に通知する「3社間」、輸出代金を確実に回収する「国際」などがあります。
経済産業省も認める資金調達法のひとつ
「売掛金の現金化」と聞くと、なんとなく「違法」「怪しい」というイメージが先行してしまうことも少なくないようです。
しかし、ファクタリングは経済産業省も「国の施策」として利用を推奨しており、正式な資金調達手法のひとつです。
- 売掛債権の利用について、売掛先(取引先)等から資金繰りが厳しいのかと言われ、利用により風評被害が発生することが心配、との声が聞かれます。
- 売掛債権の利用促進は国の施策です。本制度の普及、利用促進にご協力下さい。
したがって、場合によっては十分利用する価値がある資金調達方法であるということを覚えておくと良いでしょう。
それでは、続いてファクタリングのメリット、デメリットを紹介していきます。
ファクタリングの6つのメリット
ファクタリングには以下のような6つのメリットがあります。
- キャッシュフローの改善
- 即日で売掛金を調達できる
- 起業後すぐ、赤字決算でも審査に通りやすい
- 担保、保証人不要で返済の義務もなし
- 負債に計上されず、借り入れがしやすくなる
- 売掛先の倒産による損失をケアできる
債権を買い取るというシステム上、ファクタリングには多くのメリットがあります。
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
メリット1.キャッシュフロー改善
先に挙げたように、ファクタリングはキャッシュフローを正常化させるうえで有用な手段です。
数ヶ月後に支払われる予定の1,000万円が、たとえ900万円になってしまっても、数日で売掛金を現金化できるため、キャッシュフローが改善できるのは大きなメリットでしょう。
特に、支払いサイクルが長期にわたる建設業などでは、支払い時期が1年後、2年後になることも珍しくありません。
ファクタリングは、そうした業界でこそ大きな恩恵を受けられるでしょう。
メリット2.即日で売掛金を調達できる
1つのめメリットに近いですが、ファクタリングは早ければ即日~数日で売掛金が入金されるのもメリットです。
一刻も早く資金が必要となったときに、融資では時間がかかりすぎますので、ファクタリングの出番です。
ただし、買い取りスピードを上げるにはただ申し込むだけでは不十分です。
依頼理由を簡潔かつ正直に話す、必要書類は事前に用意するなど、スムーズに審査・手続きを終えられるよう準備は済ませておきましょう。
メリット3.起業後すぐ、赤字決算でも審査に通りやすい
銀行の融資を断られた企業でも実行できるのは、ファクアリングの大きなメリットです。
銀行を長期融資とするなら、ファクタリングは超短期融資です。
業者にとって重要なのは、買い取った売掛債権をキチンと回収できるかどうか(不良債権にならないかどうか)なので、自社の信用はそれほど重要視されません。
メリット4.担保、保証人不要で返済の義務もなし
ファクタリングは融資ではありませんので、もちろん担保や保証人は不要です。
さらに、基本的にノンリコース(償還請求権なし)で行われますので、一度買い取ってもらった債権がもし不良債権になったとしても、こちらで返済する義務はないのです。
メリット3とあわせて、銀行で融資(手形割引)の審査に落ちた企業でも実行できるのが強みといえます。
メリット5.負債に計上されず、借り入れがしやすくなる
信用に影響しない点もファクタリングの大きなメリットです。
手続きとしては、自社から業者に債権譲渡登記をするだけなので、負債としては記録されません。
また、売掛金が入金済みになることで流動負債がスリム化され、金融機関で借り入れがしやすくなる点もポイントです。
メリット6.売掛先の倒産による損失をケアできる
これは副次的なメリットになりますが、もしファクタリングで売却したあとに売掛先が倒産して不良債権になっても、こちらが損失を被ることはないのが強みです。
とはいえ、このメリットを狙って「不良債権になりそうだから」という理由でファクタリングを依頼するのはやめておきましょう。
そういった債権はそもそも審査に通りにくいです。
また、これは先ほど説明したような「償還請求権なし」のファクタリング業者に限ることを覚えておいてください。。
このように、キャッシュフローの正常化を迅速に行ううえで、審査のハードルが低いファクタリングは有力な選択肢であることがわかります。
しかし、このファクタリングにはデメリットもいくつかあります。
以下でデメリットを詳しく見ていきましょう。
ファクタリングの3つのデメリット
便利な資金調達手法であるファクタリングですが、以下のようなデメリットも抱えています。
- 手数料が高い(2社間ファクタリング)
- 売掛先の信用に影響する(3社間ファクタリング)
- 悪徳業者が少なからず存在する
それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。
デメリット1.手数料が高い(2社間ファクタリング)
ファクタリング実行にかかる手数料は、おおむね以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング…7%~30%
- 3社間ファクタリング…1%~5%
売掛先も含めて債権譲渡に同意する3社間ファクタリングでは、手数料はあまり高くありません。
問題なのは2社間ファクタリングです。
利息制限法が適用されないファクタリングでは、法律上どれだけ手数料が高くても違法にはなりません。
さらに、この手数料には業者側の「貸し倒れ」リスクを避ける保険的な意味合いも加味されています。
そのため、2社間ファクタリングの場合は、債権や申込者の信用によって、初回の手数料は15%を超えることが多くなってきます。
長期的なキャッシュフローを考えるのであれば、あまり利用するべきではないでしょう。
デメリット2.売掛先の信用に影響する(3社間ファクタリング)
3社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡通知が行われます。
そのため、リスクは低いのですが、取引先によっては「資金繰りが相当まずいのでは…?」と疑われてしまうリスクもはらんでいます。
ファクタリングはできるだけ3社間で行いたいところですが、取引先次第で今後の取引に影響が出かねないという点も注意しておきましょう。
デメリット3.悪徳業者が少なからず存在する
債権買取業であるファクタリング業を営むのに、貸金業登録は必要なく利息制限法も適用されません。
したがって、営業するだけなら参入ハードルは非常に低いのです。
また、そのように大した法規制がなく、今後どう転ぶかわからないという状況では大手金融機関も2社間ファクタリングに参入しづらいのが現状です。
業界をけん引して相場を制定する大手も存在しません。よって、今でも悪徳業者が少なからず存在します。
悪徳業者を避けるには、ネット上での広告に惑わされず、しっかりとリサーチをして実績と信頼のある業者を選ぶのが必要不可欠です。
ファクタリングは資金調達手段のひとつとして覚えておく
ファクタリングは、売掛債権を早期現金化することでキャッシュフローの改善ができる、資金調達手法の一つです。
以下のようなメリット、デメリットがありますので、覚えておきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・キャッシュフロー改善 ・即日で売掛金を調達できる ・起業後すぐ、赤字決算でも審査が通りやすい ・担保、保証人不要で返済の義務もなし ・負債に計上されず、借り入れがしやすくなる ・売掛先の倒産による損失をケアできる |
・手数料が高い(2社間) ・売掛先の信用に影響する(3社間) ・悪徳業者が少なからず存在する |
よく銀行融資と比べられがちですが、ファクタリングは数ある資金調達手法のひとつに過ぎないので、ケースバイケースで状況にあった手法を選びましょう。
実績のある業者を選び、長期的なキャッシュフローの正常化に役立てていきましょう。